画像加工ツールがスクショをアップロードすべきでない理由
スクリーンショットには、自分で思っているより多くのものが写っています。アップロードが何を意味するか、「一時間後に削除します」が何を保証しないか、そして自分で確かめる方法。
「スクショ モザイク オンライン」で出てくるサービスの多くは、ブラウザで動きます。使い方は簡単で、無料で、インストールも要りません。そして構造上、あなたの画像をどこかのサーバーへ送ります。ブラウザの中だけで完結する実装も存在しますが、外からは見分けがつきません。
この記事の主張はひとつです。目隠しをするための道具が、目隠しをする前の画像を外へ送るのは、順序として逆です。手元で完結できる作業に、外部への送信という新しい経路を足す理由がない。以下は、その理由を具体的に書きます。
その一枚に何が写っているか
アップロードされるのは、加工したあとの画像ではありません。加工する前の、まだ何も隠していない画像です。順序を思い出してください。送って、向こうで処理して、返ってくる。だから送られるのはいちばん危険な状態のものです。
そして人がモザイクをかけたいと思う画像は、定義上、隠すべきものが写っている画像です。振込の完了画面、免許証、宅配便の伝票、社員証、トーク画面。自分がこの一年でモザイクをかけた画像を思い出して、それを全部まとめて誰かに預けるかと自問すると、答えははっきりします。
仕事で使う場合は、それに加えて自分だけの問題ではなくなります。顧客の名前や取引の内容が写ったスクリーンショットを外部のサービスへ送ることは、社内の規程や顧客との契約に触れうる行為です。個人の判断で決められる範囲を超えているかどうかは、業務の内容によります。
「一時間で削除します」が保証しないこと
この文言はよく見かけますし、書いている側が誠実であることも多い。それでも、次のことは保証されません。
- その一時間のあいだ、画像はサーバーの上に存在します。削除の約束は、存在しなかったことにはできません。
- サーバーのログ、キャッシュ、CDN の中間の保存、バックアップ。削除の対象がどこまでかは、外からは確かめられません。
- 運営者が変わったとき、事業が売られたとき、方針が変わったとき。あなたが読んだ説明は、そのときのものです。
- 侵入されたとき。一時間のあいだに置かれているものは、その一時間のあいだ狙える対象です。
- 約束が守られているかどうかを、利用者側から検証する手段がない。信じるかどうかしか選べません。
これは相手を疑えという話ではなく、比較の話です。片方には「送らない」という選択肢があり、その場合これらの論点はすべて発生しません。検証できない約束を評価するより、検証の要らない構造を選ぶほうが単純です。
自分で確かめる方法
説明文を読むかわりに、確かめられることがいくつかあります。どれも特別な知識は要りません。
- 機内モードにして、通信を全部切る。そのうえでアプリを開き、画像を読み込み、加工し、書き出すところまでやってみる。全部通るなら、その一連の作業に通信は使われていません。
- ただし、これで見抜けないものがあります。あとで送る設計です。通信が戻ったときに送られる可能性は、機内モードのテストでは否定できません。
- そこで次に、iOS の設定にある App プライバシーレポートを有効にして、しばらく使ってから、そのアプリがどのドメインに接続したかを見る。接続先が並ぶので、思い当たらない相手がいればそこで気づけます。
- アプリの説明ではなく、App Store のプライバシーに関する表示と、開発者が公開しているプライバシーポリシーを読む。「収集しない」と書いてあるかどうかではなく、何を収集すると書いてあるかを読むほうが早い。
- ブラウザで動くサービスなら、開発者ツールの通信の記録を開いて、画像を読み込んだ瞬間に送信が発生するかを見る。これは少し技術寄りですが、いちばん直接的です。
この五つのうち、最初の一つは誰でも三十秒でできます。使っている道具に対して一度やってみる価値があります。
アップロードしない、という設計が何を意味するか
Marka にはサーバーがありません。アカウントもなく、利用状況の計測もなく、クラッシュの収集もなく、サードパーティの SDK を一つもリンクしていません。だからアップロードは「既定でオフ」ではなく、送る先そのものが無い、という状態です。
Mac 版のサンドボックスが求める権限はちょうど三つです。サンドボックスの中で動くこと、あなたが自分で選んだファイルを読み書きすること、そしてネットワークへ出ること。最後のひとつは、Apple の StoreKit があなたの購入を確認するためだけに存在します。アプリ自身はネットワークへの要求を行いません。iPhone と iPad で求める権限は、写真ライブラリへの「追加のみ」のひとつだけで、仕上げた画像を戻すためのものです。読み取りの権限は要求しません。元画像の選択は Apple のピッカーが担当し、選んだ一枚だけがアプリに渡ります。
この設計には副作用があって、ダウンロードが 2.4 MB で済みます。計測や収集のためのライブラリを何も持っていないと、アプリはこのくらいの大きさになります。もうひとつの副作用は、アプリが作業中の一枚しか持たないことです。Marka はライブラリではなくメモ用紙で、閉じたあとに控えを残しません。同期も履歴も無いので、残したいものは書き出すか保存してください。
手元で完結しないほうがいい場合もある
公平のために書いておくと、外部のサービスにも理由はあります。インストールできない端末で使える、複数人で同じ画面を見ながら作業できる、重い処理を任せられる。共有の作業や、そもそも機密でない画像なら、それらの利点のほうが大きいこともあります。
判断の分かれ目は画像の中身です。隠すものが無い画像なら、どこで処理しても同じ。隠すものがある画像を、隠す前に外へ出すかどうか。この問いにだけ答えれば足ります。そして目隠しの道具に限れば、答えはほぼ常に「出さない」になります。
よくある質問
ブラウザで動く画像加工サービスは、必ず画像を送信していますか。
必ずではありません。ブラウザの中だけで処理する実装も普通に存在します。問題は、利用者の側から見分けがつかないことです。開発者ツールの通信の記録を開いて、画像を読み込んだ瞬間に送信が起きるかを見れば確かめられますが、そこまでする前提の道具ではないはずです。
アプリが本当にアップロードしていないか、どうやって確かめますか。
まず機内モードで通信を切り、画像の読み込みから書き出しまで一通りやってみてください。全部通るならその作業に通信は使われていません。あとで送る設計はこれでは見抜けないので、続けて iOS の App プライバシーレポートを有効にして、そのアプリの接続先ドメインを見てください。
「一時間後に削除」と書いてあれば安全ですか。
安全とは言えません。その一時間のあいだ画像はサーバーの上にありますし、ログやキャッシュやバックアップまで含めて消えるのかは外から確かめられません。運営や方針が変わる可能性もあります。相手を疑うという話ではなく、検証できない約束と、そもそも送らない構造の比較です。
Marka はネットワークに接続しますか。
アプリ自身は接続しません。Mac 版のサンドボックスにネットワークの権限が含まれているのは、Apple の StoreKit が購入を確認するためだけです。サーバーもアカウントも計測も無く、サードパーティの SDK を一つもリンクしていません。アップロードの経路そのものが存在しません。
仕事のスクリーンショットを外部サービスで加工するのは問題ですか。
業務の内容と会社の規程によります。顧客の名前や取引の内容が写った画像を外部へ送ることは、社内規程や顧客との契約に触れうる行為です。判断がつかないなら、外へ出さない道具を使えばその論点自体が発生しません。
アップロードしないアプリを使えば、それで安心ですか。
経路がひとつ減るだけです。加工が終わった画像は、あなたが自分で誰かに送ります。何を隠したか、隠し方が十分だったかは、道具ではなくあなたの確認にかかっています。送信しない設計は前提であって、結論ではありません。
Marka でやってみる
Marka は iPhone・iPad・Mac 用のスクリーンショット注釈アプリです。見せたくないところをなぞってモザイクにし、見せたいところに矢印を置き、手順に番号を振り、投稿先の比率に切り抜いて送る。処理はすべて端末内で完結し、アップロードもアカウントも計測もなく、ダウンロードは 2.4 MB。画像を開く・切り抜き・モザイクブラシ・書き出しは無料で、Pro は 3 機種共通の買い切りです。